2017年08月09日

フィリピンにド沈没してみた3

マニラでの生活は数年に及んだが一つだけどうしても慣れることが出来なかったものがある。それは「フィリピン料理」である。一言でいうと「抜群に不味い」のである。私は現在は長期の海外生活から戻り東京で暮らしているのだが、世界の料理が集まるというこの大都会にあってフィリピン料理店はほとんど見かけることがない。実際には東京に暮らすフィリピン人相手の料理屋があるにはあるのだが、つまり、一般的には市民権を得ていないということだ。

その人気のないフィリピン料理だがマニラ滞在中に出会った日本人も口々に「不味い」を連発していた。中には「好きだ」という者もいたにはいたが、よくよく確かめてみると「物凄く大好きかと言われればそうではないが比較的食べれる」ということであった。この手の輩には妻や恋人がフィリピン人である場合が多い。つまりフィリピン贔屓ということなのだが、やはり心底好んでいるという訳ではなかった。

フィリピンに限らず自国の料理があまり美味しくない国では海外の料理が発達する。少しでも美味しい料理を研究して腕を磨き一攫千金を得ようと料理人になる者が多いからだ。逆に中国やフランスのように自国の食文化が発達している国では海外の料理についてはあまり優良店に出会うことはない。その代わり中華料理やフランス料理は世界中に紹介されているほどに高みを極めるという訳だ。料理人達は皆、その世界で腕を競い合うのである。

従ってフィリピンでは自国料理があまり好意的に見られていないらしく333年支配下にあった影響を受けたスペイン料理を始めとして、フランス料理、中華料理、日本料理、トルコ料理など等、世界中の料理をそれなりに高いレベルで味わうことが出来る。特に海外で和食がストレス無く食べられるというのは本当に凄いことだ。このことが私のフィリピン滞在を長くさせた理由の一つと言っても良いと思う。物価が低いため焼肉や寿司、ちゃんこ鍋や焼き鳥、お好み焼きと毎日日替わりで好きなものを食べていた。海外滞在中に太ったのはこの国だけである。

但し、フィリピン料理だけはどうも食指が動かなかった。わりと雑食でパクチー(香菜)やドリアンなどでも平気で食べる私だが、あまり美味しく感じることはなかった。確かに食べれないことはないのだが、朝・昼・晩と三食続くともう限界を感じたものだ。勤め先の米屋のローカルスタッフと仕事の後で夕飯を食べるのは楽しかったが正直なところ酒ばかりのんで食事には手をつけず、帰宅してからラーメンなどを食べたりした。

その美味くないフィリピン料理の中でも、私が特に食べたくなかった料理を紹介したいと思う。「バロット」と呼ばれる半熟ゆで卵がある。これはアヒルの卵なのだが半熟の意味が違うのだ。なんと、孵化する途中の黄身からヒヨコになりかけの状態で食するという不気味な食べ物なのだ。こんな罰ゲームのようなものを若い綺麗な女性達が栄養満点食材として好んで食べていたのだから百年の恋も冷めるというものだ。これを仕事の合間、休憩中に皆が食べろと勧めて来るのである。うげ〜!

まずゆで卵を立てた状態で頭の部分の殻をスプーンで叩き穴を開ける。そしてその穴から中のスープ(?)を飲むのだ。そして次に卵の殻をすべて剥いていく。すると、中から半分ゆで卵で半分ヒヨコになりかかったホラー物体が現れる。それをパクッといくのである。ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!これは辛い、なかなかに辛い。ただ何度か食べると気持ちが慣れてくる。味そのものはニワトリのゆで卵とほとんど同じだ。落ち着いて食べればこれは美味しいかもしれない。ポイントは見ないで食べることだ。

もう一つ凄い料理がある。「スープNo.5」である。中華スープのような色をしている液体の中にミートボールらしき肉片が幾つか入っているものなのだが…。実はこの肉片の正体は牛の睾丸なのだ。うぐぇーーーーーーーーーーーーー!!これの何が嫌かというと、ニオイがとにかく臭いのだ。一度このニオイを嗅いでしまうと変な想像が止まらなくなってしまう。食欲減退間違い無し。ダイエット効果は物凄く高いものがあると思う。

そして最後に紹介したい料理が「JOLLY BEE」である。これは料理の名前ではなくバーガーチェーン「ジョリビー」の名称なのだが、そこで出すメニューのほぼ全てが地獄だと言ってよいだろう。このチェーン店はフィリピン資本による自国のオリジナルブランドで海外にも展開している。香港やハワイ、いわゆる出稼ぎフィリピン人(=OFWと呼ばれる)のいるところにジョリビーありというわけだ。私も香港滞在時に一度だけ入り二度と行かなかった。フィリピン系バーガーチェーンだとはその時には知る由も無かったが。

バーガーチェーンと言えば当然マクドナルドが有名だ。世界中で店舗展開しておりどこの国でもマーケットシェア1位を記録している。ところが世界で一箇所だけマクドナルドが2位に甘んじている国がある。そう、それがフィリピンであり理由はジョリビーが一番国民に愛されているからなのだ。しかし、何故ここまでジョリビーは人気を獲得しているのであろうか。子供から大人まで老若男女がジョリビーへ向かう理由とは?

世界の物価を比較する際にマクドナルドのビッグマック単価を物差しにする経済指標がある。フィリピンは物価が低いためこの単価も低く抑えられている。コーラとポテト(それぞれラージ)をセットにしても、なんと250円なのだ。こんな価格設定の国は他にあまり無いと思う。しかしこれがフィリピン人には非常に高い設定なのだ。彼らは正規雇用されていない非正社員の場合、日給が500円なのだ。非正社員には最低賃金法が適用されない。6ヶ月間の試用期間を経て晴れて正社員として雇用されると700円に昇給するのだが、皆5ヶ月で解雇されてしまうため多くの人々の稼ぎは500円。マクドナルドは彼らにとって高級レストランに位置していることになる。

そこに現れたのがジョリビーだった。マクドナルドに子供達を連れて行ってやりたいけど出来ない親達の心をくすぐる怒涛の低価格設定がなされているのだ。一般市民にとって非常に入りやすい敷居の低いバーガーショップ。しかし、内装はマクドナルド並みに洗練されたレイアウトが施されており精神的な満足度も高い。ジョリビーのキャラクターである赤と黄色の蜂は子供達に大人気となっている。この手軽さ故にこぞって皆がジョリビーへあしげく通うわけである。

私は香港時代の苦い思い出があるためマニラ滞在中には自らジョリビーに入ることはなかった。それでも一度だけ日本から友人が私を訪ねてきた時に行ったことがある。好奇心旺盛なその友人がどうしても行って見たいと駄々を捏ねたからだ。「俺はコーラだけ飲む。お前だけ食べろ!」という約束をして、仕方なしに店へと入って行った。店内ではガキどもが我が物顔で縦横無尽に叫びながら走り回っていた。友人も流石にその雑然とした光景に怯んだ様子であったが、それでもカウンターまで行くとビッグマックに似たバーガーセットを注文した。

子供軍団に囲まれたテーブルに着くと私は黙って彼の様子を伺っていた。とにかく、一刻も早く店の外に脱出したかった。コニチワ!コニチワ!と話しかけてくるハナタレ軍団。うろたえながらも友人は最初の一口目を思い切ってガブリといった。するとピタッと彼の動きが止まった。その固まった状態で彼は一言私にこう言った。「脇の下の味がする…」。

<続く>

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ラベル:フィリピン
posted by ランボルギーニ・タコラ at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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