2017年08月10日

フィリピンにド沈没してみた4

フィリピンでは小学校一年生から英語の授業がある。高校を卒業する頃にはみんな日本人よりも遥かに高い英語力を持っている。日常会話くらいならほとんど問題はない。実はフィリピンの国家収益の10〜11%は海外出稼ぎ労働のフィリピン人達(これをOFWと呼ぶ)からの送金によるものなのだ。それほどフィリピン人達は海外のあちこちで働いている。英語が話せることで比較的容易に働き口を見つけることが出来るのだ。

しかし逆に言えばフィリピンの学校はOFWになるための勉強だけをせっせと生徒達にやらせているとも言える。そのため算数や数学などは二の次にされている。この数学マインドがないことが非常に大きな問題をはらんでいる。足し算、引き算は数字だけでなく普段の生活のなかでも大きな役割を果たしている。何が優先すべきことなのか、排除すべきことはなんなのか。大人達は建設的な思考ができないのだ。物事の先を読むということが出来ない。そのためみな行き当たりバッタリの生活を送る羽目になってしまう。

まず老若男女問わず単純な計算が出来ない。そのため様々な場面でおかしなことが起こる。例えば19時という表現を彼らは理解出来ない。必ず7PMという。すぐに分からなくても12を引けば良いと言っても頭で計算出来ないのだ。とにかく数字というものに弱い。水が何度で沸騰するのか聞いたら「10分くらいかなあ?」と答えた強者もいた。極端に言うと彼らは低賃金で雇用されている自らの矛盾した環境に気が付くことが出来ない。或は政府が低賃金を維持するために敢えて数学に力を入れていないのかもしれない。

あるフィリピン人の友人Kはサリサリストアー(個人レベルの雑貨店)を営むことにした。1万ペソを元手に洗剤や歯ブラシ、シャンプーなどの生活必需品を仕入れて自宅前で販売し始めたのだ。場所がよかったのか初日から売り上げはよく商売は上手く進むと思われた。開店から一ヵ月後に彼は月商を算出してみた。「やったぜ、1万5千ペソも売ったぜ!」と大喜びのK。店を始める前のKの月収は8千ペソだったのだ。翌日Kは近所の人達を招いて盛大なパーティーを開催した。

Kは以前、私が働く米屋のドライバーだったので同僚であった私もそこに招待された。さしずめビックになった自分を見て欲しいということだろうか。会場に行くとレチョンがどーんと置いてある。フィリピン人にとってご馳走の豚の丸焼きである。チキンやパスタ、ピザ。酒もテキーラやブランデーまで並んでいた。このパーティーの盛大さにいささか疑問を感じた私はKにこっそりと聞いてみた。「お前一体幾ら使ったんだよ?」彼は笑いながら「このくらいなんてこと無いぜ、来月もやるから来いよ!」と言った。

そしてその翌日Kは途方に暮れて空を仰いでいた。聞けばストアーをたたむという。何故なら運転資金が底をついたからだ。Kはパーティーに1万5千ペソ全てを使ってしまったのだ。それが利益だと勘違いし翌月の仕入れ資金1万ペソを残さず全て散財してしまったのだった。日本人には全く考えられない話だが、この手のミスは後を絶たないのである。

私が働いていた米屋でもこんな話があった。ある日米を入れる袋の在庫がなくなりそうになっていた。そこでアシスタントの女性に発注するように指示を出した。彼女はどのくらい発注したらよいか聞いてきたので、「そうだな、1日に30枚使うから30枚x1年分で頼んでおいてくれ」と言っておいた。すると数日後に店の前に4tトラックが到着しおびただしい数の米袋を納入し始めた。私は慌てて袋屋に電話をしたが間違っていないという。伝票を見ると24,000枚で発注されていた。

すぐにアシスタントを呼びつけ怒鳴って言った。「誰がこんなに頼めと言った?」「セール(=Sir)です」と彼女は抜けぬけという。「俺は1年分って言ったんだぞ!」と叫ぶ私。「セール、そのとおり発注しました…」と半ベソの彼女。どうも話が噛合わない。指示は正しく伝わっているのに数が多すぎる。ふと、もしかしたらこの「1年分」という言い方が悪かったのかもしれないという考えが私の頭をかすめた。「おい、リサ、1年て何日だ?」「800日です、セール…」。

こんな話もある。お昼休み時に「ワウワウウィー」という国民的人気を誇るテレビ番組があった。人気の秘密は視聴者が参加できるクイズコーナーだった。その賞金が一問正解する毎に倍になっていき最後には1000万ペソという途方も無い金額になることが視聴者を釘付けにさせていたのだ。挑戦者が正解する毎に会場の客席にいる観覧者達もヒートアップしていく。いわば、ミリオネアのパクリ番組である。

クイズは最初のうちは簡単な問題が出題される。マライアキャリーのヒット曲は何か?アメリカの首都は?など。挑戦者は当然、次々に正解を重ねていく。獲得金額もどんどん上昇し会場の熱気は最高潮に達する。そして500万ペソから1000万ペソへの問題に挑戦するかどうか司会者が尋ねる。「やれー!やれーっ!」とけしかける観衆。挑戦者も引くに引けなくなり「やります!」と高らかに宣言してしまうのだ。

そして運命のラスト問題が出題される。「ラスト・クエスチョンです。100÷4は?」勢いよく回答スイッチを叩く挑戦者。「ピーン!50です!」と最高の笑顔」ブブブブー、無残に鳴り響く不正解の音。「あ〜」と落胆する聴衆の声。不正解を導き出し心なしか嬉しそうな司会者が「ああっ、惜っし〜い、回答は25でした〜!」と言い放つ。不正解となるとそれまでの獲得金額は一気にゼロになってしまうのだ。米屋の食堂で番組を観ていたフィリピン人の同僚が私に言った。「あんな難しい問題、答えられる奴いね〜よな!」

<続く>
ラベル:フィリピン
posted by ランボルギーニ・タコラ at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする